Logicool G FITS レビュー
Logicoolから発売した初のLIGHTSPEED搭載ワイヤレスイヤホンG FITSをレビューしていきます。
今まで2.4GHz帯を利用した低遅延接続のイヤホンは見かけることが少なく、私が知るのはEPOS GTW 270くらいでした。
ついにLogicoolが参入すると聞いて喜んだものです。
ただこのイヤホン、それだけじゃないんですよ…。マジですごいんですよ。
本稿ではデザインをはじめ、音質や遅延についてもチェックしていきます。
概要
Logicool G FITSは2.4GHzを利用するLIGHTSPEEDワイヤレスと、Bluetooth 5.2の接続の両方に対応したワイヤレスイヤホン。
Logitechの小会社であるUltimate Earsが販売しているUE FITSに2.4GHz無線などを取り入れてゲーム用としたモデルです。
耳に入れた状態で使うと、最初のみ紫外線照射によってイヤーチップの形が自分の耳に型取られるというユニークなLIGHTFORMテクノロジーが搭載されており、自分の耳に合った唯一無二のフィット感を得られます。
このフィット感が半端なく良い。
低遅延+最強のフィット感の二刀流イヤホンですね。
ただし値段の割にはANCがないことや、ミックス接続では非対応、ケースのワイヤレス充電は不可…などなど、完璧にはまだ少し遠くもあります。
とはいえどこまで求めるんだって話でもあるんで、総評として先にお伝えすると優秀なイヤホンです。
スペック
カラー | 黒 / 白 |
接続 | LIGHTSPEED 2.4GHz / Bluetooth 5.2 |
オーディオ | ステレオ |
対応コーデック | AAC/SBC |
タイプ | IEM |
重さ (片耳実測) | 7.2g |
スピーカー周波数特性 | 20Hz – 20kHz |
スピーカーサイズ | 10mm |
マイク | ビームフォーミング |
バッテリー | 本体7h + 1回充電分 |
ANC | |
ワイヤレスチャージ | |
タップ操作 | |
スマホアプリ | |
マルチポイント | |
ミックス接続 | |
保証 | 2年間 |
同梱物
- イヤホン本体
- 充電ケース
- USBレシーバードングル
- USB-A to C変換コネクタ
- USB-Cケーブル
- 説明書など
なぜだ…なぜステッカーがついてこない…!とちょっと残念に思いましたが仕方ない。
本機のイヤーチップは紫外線で硬化してしまうため、最初はしっかり包装されてきます。間違っても燦々と太陽が降り注ぐ真夏の空の下で開けてはいけません。
箱の説明書きに沿ってG FITSのアプリをスマホにインストールし、手順に従って準備していきます。
イヤーチップの準備
アプリをインストールしてBluetooth経由でイヤホンをスマホに接続し、手順に沿って熱成形を行っていきます。
耳に突っ込んで少しだけ圧をかけながら熱成形スタート。
紫外線が照射されたイヤホンが発光し、耳が暖かく感じます。熱くはない。
例えるなら美容院で適温のお湯でシャンプーしてもらってるとか、疲れた1日の終わりにホットアイマスクを装着してゆっくりベッドに体を沈めるみたいな…そんな感じの暖かさ。
ぽかぽかする。
鏡見るとめちゃくちゃ発光してますが、あくまでこの熱成形においてのみで、実際の使用時には光りません。
終了するとこんな画面に。いきなり感触を聞かれてもまだよく「分からない」と答えるしかない。
キュッと耳栓されている感じじゃなくて、窮屈な印象は受けないんだけど全然落ちる気配がない。すごい。
よく見ると先端の形状が変わっていたり、右側のカーブの形が変わっていたりします。
失敗したとしても別売りされている替えのイヤーチップを購入すれば良いのですが、一組あたり定価税込み4,950円とお遊びでは購入できない値段になっております。とはいえ、保険が残されているのは安心ですね。
とりあえず熱成形に関して不安に思っている方には、割と気持ち良い暖かさで、ちゃんとフィットするようになるから心配しないでいいよって言っておきます。
デザイン
さて準備の話が長くなってしまいましたが、最高のフィット感を得たところで本イヤホンやケースのデザインについて見ていきましょう。
充電ケース
充電ケースは卵を少し平べったく潰したようなサイズ感と形状で、触り心地はサラサラとしたプラスチックタイプ。
3万円超えのイヤホンとしてはもうちょっと高級感あっても良さそうなもんですが、良しとしましょう。
このケースは薄さが最高。
私はSONY WF-1000XM4やSennheiser MTW3など愛用していますが、ケースの厚みがありすぎてポケットに入れるとボッコーンと膨れます。
それがG FITSのケースにはない。持ち運びにももってこいな、よく考えられた薄さだと思います。
イヤホンのイヤーチップ形状が人によって変化するため、ピッタリフィットというよりも少し余裕を持ったスペースになっています。
イヤホン収納時はしっかりマグネットでパチンと止まるので、中で遊びがあるわけでありません。
強くケースを振っても一切カラカラ音を立てたりしませんのでご安心ください。
ワイヤレス充電に非対応なのが残念ポイント。
それとかなり汚れがつきがち。ウェットティッシュなどで強く拭けば綺麗になりますが、毎回清掃するのが面倒な人は黒色の方を選んだ方が幸せかも。
イヤホン本体
細長いハンマーヘッドシャークのような形状をしたハウジング。
すっごい持ちやすいです。よくある小さなイヤホンだと気をつけていても落っことしてしまいますが、これだけ掴みやすいと全く落とす心配がない。
LIGHTFORMテクノロジー対応のイヤーピースはかなり大きくて、一般的なイヤホンのように細いノズルにくっついているというより、大きなノズルに覆い被さるようにはまっています。
もちろん取り外し可能。もし成形に失敗したり、どうしてもサイズ感が合わなかったら別売りのイヤーピースを買ってもう一度チャレンジしてみましょう。
イヤーピースを外すとなんだかメカメカしい見た目に。
重さは片方で7.2gほど、充電ケースは43gほどでした。
USBレシーバードングル
LIGHTSPEEDで接続する場合はUSBレシーバードングルを対象機器に接続して使います。
ワイヤレスマウスのレシーバーよりは大きいけど、ヘッドセットのレシーバーほどは大きくないというサイズ感。
Type-AからType-Cへと変換するコネクタがついてきますが、このコネクタも妙に長い。
例えばスイッチに接続しようとするとこんなことになっちゃいます。
これいつかコネクタ折ると思う。
というわけでL字変換コネクタを購入しておくと幸せになれるかもしれませんね。
SwitchでLIGHTSPEEDとBluetoothの接続を両方試してみましたが、やっぱりBluetoothは遅延がきつかったです。
性能チェック
Logicool G FITSの性能について紹介していきます。
遅延を検証
LIGHTSPEEDワイヤレスの低遅延接続とBluetoothモードの各種接続で遅延を検証してみました。
遅延の計測方法について
遅延の計測にはiPhoneを使いました。
240pのスローで画面を撮影し、PCに接続したイヤホンをマイクにあてがった状態で映像を録画します。
- VALORANTのトレーニングモードでオペレーターを持つ
- スコープを除き、銃を撃つ
- スコープ画面が切り替わる瞬間と銃声の始まりの差をフレームで求める
- 有線で基準を作り、それに対してどれだけ遅れているかも調べる
240fpsで撮影しているので、1フレームあたり1÷240=0.004秒(切り上げ)。0.004秒=4msです。
フレームでいくつズレているかを確認し、最終的にミリ秒で遅延とします。一応リファレンスとしてストップウォッチを別モニターで起動してそれも録画しています。
今回リファレンスに使ったのはShure SE215でした。スコープ切り替わりから音発生まで8msほどありましたので、それを考慮しつつ遅延を見ていくと以下の通りとなります。
接続方式 | 遅延秒数 | 有線との差 |
---|---|---|
LIGHTSPEED | 8ms | 0ms |
Bluetooth (ゲームモード) | 17ms | 9ms |
Bluetooth (通常モード) | 30ms | 22ms |
通常モードのBluetoothではちょっとお話にならないレベルの遅延があり、ゲームをプレイしていてかなり違和感があります。
ゲームモードが思ったよりも仕事をしていて、かなり遅延の差は縮まっていました。コーデックがSBCからAACに切り替わっているようです。aptX以上だったら最高なんですけどね。
LIGHTSPEEDは言わずもがな最速で、ほぼ有線と変化が見られません。FPSや音ゲーを問題なくプレイできるレベルだと感じました。
今回はPCでの遅延検証でしたが、接続するデバイスによってこの結果は変化する可能性があります。
フィット感は最高
私の耳は左右で穴の大きさが違います。
昔耳鼻科いった時に医者のおっさんに「ガハハ!君左右で穴の大きさ違うな!」って何気なく言われたのをなんだか一生覚えてるんですよね。
別に嫌だったわけじゃないんだけど、そうか、耳の穴違うんだ…って。
これは成形後ですが、左右で形状が少し異なっているのがわかるでしょうか。
多分私だけじゃなくてみんなも左右で耳の形ちょっと違うんじゃないかな。そうしたらこのカスタムフィットって大正解ですよね。
もちろん普通のイヤーピースでもはまるんだけどさ、このカスタムされたフィット感はめちゃくちゃ良いです。抜群に良い。
装着してみると、右側の方が少し浅めにフィットしているんですが、浅く感じたとて首をどれだけ振ろうとも全く落ちる気配がありません。
G FITSって名前だけあってその名に恥じぬフィット感。たまらん。
音質について
音質はめちゃくちゃ良いというわけでありませんが、基本的に良いです。
同価格の有線イヤホンの方が音質は良いですし、ワイヤレスでもSONYとかSennhesierのフラッグシップモデルに比べると劣っている印象を受けますが、ゲームするのは全然及第点。
音楽聴いていても物足りなさはあまり感じませんし、幅広く使えるかなと。
ゲームすると低音が足りなくて少しスカッとした印象があったのでイコライザーでちょっと足してあげても良いかもしれません。
それ以外、つまり中音と高音は聴きやすかったです。
定位感はヘッドホンなどと比べてやや分かりにくいかなと感じました。
イコライザー設定
イコライザーは簡易パラメトリックEQみたいな感じで視覚的に分かりやすいです。
プリセットが一見良さそうに見えるんですが、これカスタマイズで開いてみると全部すっごいいじってるので音質的に微妙です。
例えばこれ、低音ブーストですが、ぱっと見た感じだと低音強めで一部高音抜いてる、 良さげな感じじゃないですか。実際に音を聞くとめちゃくちゃ微妙です。
それもそのはず。カスタマイズで開いてみると、実際にはこんなに高低差があってかなりチューニングしてるからですね。
自分でゴリゴリにカスタマイズできるので、リアルタイムで音を流しながら色々と触って調整してみるのがおすすめです。
バッテリー持ち
バッテリーの持ちは2.4GHzとBluetooth、さらにマイクのオフ・オンで異なります。
接続方式 | マイクオフ | マイクオン |
---|---|---|
LIGHTSPEED | 7時間+8時間(ケース) | 4.5時間+5時間(ケース) |
Bluetooth | 10時間+12時間(ケース) | 6.5時間+7時間(ケース) |
後述しますがマイクの音質はイマイチなので、マイクは切った状態で使うのが良さそう。
ケースの充電容量はともかく、ワイヤレスイヤホン本体としてはほどほど長寿命ですね。ANCがないのも関係していますけど。
サポート体制が手厚い
熱成形によるカスタムフィットは少し難しいことをしているためトラブルも多そうですが、サポート体制がしっかり構築されており、G FITSアプリ経由でサポート連絡できるように配慮されています。
不安に思う方も多いでしょうから、実際に熱成形を行う前に疑問点があるなら連絡して相談するというのもありでしょう。
タップの反応が微妙
けっこう無反応な時が多くて、タップできる面積が狭すぎるのか、感度が悪いのか、さらっと気持ちよくタップできることが少ないです。
私の場合、左耳の方はわりと反応するんですが、右耳が感度悪めですね。
LIGHTSPEEDとBluetoothを切り替えるにはどちらかのイヤホンを3回タップしなければならないため、どっちも感度悪かったら致命傷でしたが、左耳でなんとかなってます。
ミックス接続・マルチポイント非対応
せっかく2.4GHzとBluetoothの両方に対応しているのにミックス接続には対応していません。
スマホで会話しながらPCでゲーム…といった芸当はできませんでした。どうやら海外では需要がそんなにないみたいですが、ちょっと残念。
また、Bluetoothは複数の機器に登録できますが、マルチポイントには対応していません。これもちょっと惜しいなという部分の1つ。
マルチポイントって慣れると便利すぎて手放せないんですよね…。
ANCなし
本イヤホンにはANC(アクティブ・ノイズ・キャンセレーション)が搭載されていません。
いわゆるパッシブノイズアイソレーションという、イヤーチップのフィット感によって遮音性をキープするという話ですが、外の音は普通に聞こえます。
ゲームしていたり音楽を聴いていたりすればそれなりに集中できるため、家中ならほとんど気にならないんじゃないかと思います。
個人的にはANCって耳に負担がけっこうくるんでオフにすることも多いんですよね。特に家で使うならほぼいりませんし。
外の電車などで使ってみると、やはり普通にノイキャンのないイヤホンだなって感じです。電車通勤向きではないかな。
マイクはイマイチ
ビームフォーミングマイクを搭載していますが、音質はイマイチです。ないよりマシ程度。
歯擦音が激しくささりますね。
波形を見た感じ、一定の音量以下で無音状態に近くなったのでゲート閾値のようなものは設定されているっぽいです。
いずれにせよ、別立てでマイクを用意した方が良いでしょう。
ソフトを統一してほしい
スマホのG FITSアプリでは基本的な設定とイコライザー設定が行なえます。
PCのG HUBに接続すると、マイクのオフ・オン、ゲイン調整、サイドトーンのオフ・オンのみ可能です。
G HUBでできることは全てG FITSのアプリでできるようにして欲しいし、逆もまたしかりで、G HUBでイコライザー設定ができるようにして欲しい。
設定できる項目が異なるのはちょっと不思議ですね。
また、ファームウェアをアップデートしようとするとPCのG HUBへ接続しないと更新されないため、PCが必要不可欠となります。これはスマホ経由でも行えるようにしてほしいところ。
どんな人におすすめか
低遅延のワイヤレスイヤホンを探している人にとって数少ない選択肢の1つとなります。
自分の耳の形に成形するLIGHTFORMテクノロジーによる類まれなるフィット感によって非常につけ心地の良いイヤホンとなっています。
価格は高いのですが、ANC非対応、外音取り込みなし、ワイヤレス充電非対応といったネグられている部分もあるのは確かなので、自分が求めている機能が網羅されているのか、その辺は割り切れるのか熟考しましょう。
カスタムフィット、低遅延接続、それなりの音質で欲しいなと思えれば他のことは気にせずとも買いで良いかと思います。
まとめ
- 唯一無二の極上フィット感
- 低遅延接続対応
- Bluetoothでゲームモード搭載
- 音質はそれなりに良い
- 充電器がコンパクト
- イコライザー設定可能
- バッテリー持ちは悪くない
- サポート体制が手厚い
- マイクはイマイチ
- ミックス接続、マルチポイントなし
- タップ反応感度がイマイチ
- ワイヤレス充電なし
- ソフト改修でもっと便利になりそう
以上、Logicool G FITSのレビューでした。
デメリットも色々書いたけど、基本的に本機はカスタムフィットと低遅延接続というこの2つがめちゃくちゃメリットなのでかなり優秀なイヤホンだと思ってます。
ミックス接続とかマルチポイント対応だったらもうメガ盛りみたいな感じで最高だったろうなっていう願望がちょっとありますけど、家でゲームに使う分には全く困りませんし、これ以上機能増やして価格がどんどん上がってもちょっとって感じですしね。
有線と比べても遅延差はほぼなさそうですから、競技シーンでも問題なく使えそうです。やはり低遅延無線は正義。
ただ定位感はイマイチかな…FPSで勝ちに行くならヘッドホンの方が良さそうな気はします。私はというと、LoLとかDiablo4でバリバリ使ってますね。
ヘッドセットじゃなくてイヤホンな気分の時、有線にこだわらなくても良くなったのは個人的にとても嬉しくて、SE215からG FITSメインに鞍替えしました。